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2011/05/06 (Fri)
5/4の無料配布です。
堂郁、小毬……といいつつ、相変わらず柴崎&郁の女子トークです。

久しぶりに書いたのですが、やっぱり楽しかったです!



 あっと口にしかけた言葉は、慌ててぐっと飲み込んだ。郁にしては上出来な反応だったと自分でも思う。
 前を歩いていた二人に気がつかれないように、郁はくるっと踵を返した。
 一歩一歩進む度に速度が上がってしまうのは、浮き上がった気持ちのせいか。
 そっか。もう片想いなんかじゃないんだね。
 二人の関係が大きく変わった事に気が付いたのは、きっと郁だけではないだろう。
 例えば、何気なく小牧に向けられた、ふんわりとした柔らかい毬江の笑顔一つ取っても以前とはどこか違う。小牧に一途だったその瞳は、自信に溢れた毬江の心情を雄弁に現している。
それを丸ごと受け止めた小牧の表情も、今まで見たことのない優しくて、目にしたこちらが恥ずかしくなる程だ。
胸をきゅっとするような、どきっとするような、思わず息を飲んで魅入ってしまう程、二人の様子は美しい絵のようだった。
 きっと、先日起きた事件が、二人の間に散らばっていた最後のピースを繋ぎ合わせたのだろう。
 毬江が小牧の事を想っている事は、最初に出逢った時から予想していた。だからもし、二人の関係が変わるのなら、鍵は小牧が握っていたはず。
 もしくは、守る存在だと思っていた毬江に救われたことが、小牧の中にある何かを動かしたのか。
「ばんざーい!」
 無性に嬉しくなって、廊下だということも忘れて飛び跳ねてしまった。
 よかったね、毬江ちゃん。
 一途に小牧を慕っている姿が、自分の中の何かと重なった。
 あれ、これって――
「コラ笠原っ! 廊下を走るなっ!」
 それが何かと分かる前に、堂上の声が郁を追い掛けてきた。
 そんな上官の怒声にも、上の空だった郁は「はーい」と答えてそのまま走り続け――すぐに、後ろから追い掛けてきた堂上に、小学生みたいな注意をさせるなと頭を叩かれたのは言うまでもない。



「いいなあ」
そう口をついて出た呟きは無意識だった。
「なーにが?」
ぼんやりとあらぬ空間に視線を向けてぼんやりいた郁に、柴崎はテレビから視線を逸らさぬまま尋ねてきた。
ちなみに、柴崎は気になるニュースがあるのか、朝からずっとこんな感じだ。良くあることなので、すでに気にならない。
「……え? なにがって?」
柴崎の声に我に返った郁が、きょとんとした顔をして柴崎を見た。
「なにがって……。それはこっちの台詞でしょう。質問を質問で返されると困るんだけど」
やっとテレビから視線を離した柴崎が、呆れた顔をしながら郁を振り返った。
「あんたが、思わせぶりな声で『いいなあ』なんて羨ましそうに言うから、『なにが?』って聞き返したわけ。アーユーオーケイ?」
「えっ? あたし、そんなこと言った?!」
「………」
この狭い部屋の中、あんたとあたし以外に誰がいるんだ。そう口を開きかけ――、柴崎はすぐに不毛な会話だと気がついた。
かわりに、柴崎は細く長い腕を郁に向かって伸ばした。-
「いったぁい!」
郁の額に向かって指を弾いた。
「さあ、何を妄想してたのか、おねーさんに白状して楽になりなさいっ。今なら罪は軽いわよぉ」
 そんなからかい口調に、罪ってなんだと郁はつっこんでしまう。
「も、妄想なんかしてないもんっ。ただ、二人がいい雰囲気だったなあって思っただけで……別に」
「ふぅん? それで、なにを『いいなあ』って思ったわけ?」
やっと本題に戻った会話に柴崎はにやりと笑う。固有名詞は出さなかったが、どうやら、この先の展開が読めてきているようだ。
どうせバレる事だと今度は素直に口にする。
「柴崎が期待してるような事を考えてたわけじゃないもん。ただ、小牧教官と毬江ちゃん、うまくいってよかったなあって思っただけで……」
二人の間柄が、以前と名前を変えたことくらい、鈍い郁にも分かる。その雰囲気を羨ましいと感じたのは、ちょっと素直に認めたくない部分である。
「それで?」
もう一息、との掛け声に、郁は真っ赤になった。
「な、なによっ! あたしは別に、羨ましいとか思ったわけじゃなくて、その……。お互いの雰囲気が変わったなあって、幸せそうだなって、えっと、だからただ、それだけでっ」
「ふうん? じゃあ笠原は、堂上教官とあんな風になりなくないの?」
 ぐいっと身を乗り出し、郁の頬をぺちぺちと叩く柴崎に、郁の脳内は爆発した。
「なっ、なに言ってんのよっ! ななななんであたしが、きょ、教官と……その、こいびとみたいになりたいなんて思うわけっ!?」
 その上擦った声は、郁の気持ちを明確に代弁しているだけだったが、自分の気持ちが良く分からない郁はその事に気が付かない。
そりゃあさ、最近はちょっと頼りになるし、カッコイイ時もあるな……とは思うこともあるけどさっ。
もごもごと口にする言葉に、柴崎が笑っているのが気配で分かる。
柴崎の顔をまっすぐに見られない辺りが、自分の言葉を否定していると、郁は気がついているのだろうか。
「ふーん。じゃ、堂上教官とはあんな風になりたくないんだ」
「なりたくないとは言ってな……」
最後まで言い終える前に、郁は自分の失言に気がつき、両手で口を押さえた。
「やだ、かっわいー!」
「ぎゃっ! やめろなつくなっ!」
きゃーっと黄色い声を上げながら郁に飛び付いてきた柴崎に、郁はげんなりとした声を上げながら、その手を遮る。
「あーん! あたしの癒しがあっ」
「人を勝手に癒しに使うなっ」
 ぺちっとその手を叩くと、ケチっと舌を出された。
 おまえはコドモかっ! しかし、間違っても声に出したりはしない。うっかり発言で痛い目に合うのは郁の方だ。
「で、堂上教官とはどこまで進んだの?」
「な、な、なに言って……進むどころか、いつも喧嘩ばっかりで、……もう呆れられちゃってるよ」
「あらあらー。自分の事となると、素直になれないのねぇ」
 まるでどこかの誰かさんと一緒。そう呟きながらくすりと笑われた意味は、郁には分からない。
「もう、ほっといてよっ」
 これ以上なにか言われたら堪らないと、郁はクッションで頭を隠した。
「じゃ、勝手に報告させてもらおっと」
 ぎくり。携帯を開く音に、郁はばっと身体を起こした。
「いやあああっ! ちょっとなにそれ教官になにを言うつもりなのっ!?」
「さあ? どうしよっかなー」
携帯を持った手に飛び付いた郁は、柴崎のくすくす笑いに気がつき――からかわれたのだと悟った。
「もうっ! イジワルっ!」
 一気に身体から力が抜け、がっくりとその場に崩れ落ちた。
 かああっと真っ赤になった全身は、なかなか熱が下がらない。
 ちょっと落ち着け自分! からかわれただけだから!
なんの武器も持たずに、柴崎に挑んだ己の未熟さを嘆くしかない。
「あんたって、ほんとーにかわいいわねえ」
「うるさいうるさいっ!」
俯いた頭をぐりぐりと撫でられ、せめてもの抵抗で頭をぶんぶん振って抵抗した。
まだ、この気持ちの正体を分かりたくない気持ちが半分なのだ。
いつから堂上が気になる存在だったかと聞かれれば、最初から、というしかない。
堂上は会ったその日から、鬼教官として、郁の印象に刻まれている。
なにくそ今度こそ唸らせてやる!
そんな闘争心が、郁のやる気に火をつけたのは間違いない。
アホか貴様とみんなの前で何度叱られたか分からない。だが、どんな時だって、最後まで付き合ってくれたのも堂上だ。
上司としては、とっくに尊敬している。
じゃあ、このもやもやと定まらない気持ちは、更になにを求めてのものなのか。
郁が困った時、一番に探してしまうのは堂上の姿だ。もれはもう自覚している。
でも、仕事を離れても一番に救いに来てくれるのも、堂上なのだ。
手塚の兄に呼び出された時の事は忘れられない。
繋がれた手の熱さ、そして不安だった心まであっと包み込んでくれた、あの力強さ。
ガラス越しに堂上の姿をみつけた自分がどんな顔をしていたのか。
想像するまでもなく、容易に思い浮かんでしまう。
 ああ、もうちょっとだけ、その答えを出したくない。


「笠原さんはさ、素直だよね」
小牧の何気ない問いに、堂上は飲みかけていたビールに噎せた。
「……な、なにを突然」
誤魔化すように噎せ続ける堂上の様子をちらりと見ながら、小牧が楽しそうに笑う。
「いや、今日毬江ちゃんと一緒に居るときに休憩中の笠原さんと会ったんだけどね。なんだか気を遣ってくれたみたいで……くくっ」
 当時の光景を思い出してか、小牧の上戸に火がついてしまったらしく、ごめんと断って後ろを向いたが、震えるその肩から暫く止まらなそうだ。
「あーすまん」
 その時の状況を想像するのは容易く。郁の過剰な反応を思い浮かべて堂上はバツが悪くなった。
「あ、そうなんだ。そこで堂上が謝るんだ。ふーん?」
 涙目で振り返った小牧は、なにやら楽しそうだ。
「……部下だからな」
 その反応に、からかわれたのだと悟り、堂上はむすっと口を閉じた。なにが悪いと開き直れない自分の往生気の悪さがもどかしい。
「まあ、それも間違いじゃないけどさ」
 上司は素直じゃないねぇ。そう付け加えられた言葉を、堂上は無言でビールを飲み干すことで黙殺した。
 俺とあいつでちょうどいいじゃないかとは、悔し紛れにこっそりと心の中でだけ呟いた。

2011/05/04 スイートフラワー

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