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2008/12/27 (Sat)
皆様、お元気でしょうか?いよいよ明日が本番ですね!
…私は全身が怠くて泣きそうになっておりますが、明日は無事に行けるか大変心配です…。どきどき。手が震えてるよ!(汗)
☆冬コミ二日目
スペースNO【ク-23a】
サークル名【スイートフラワー】
*再録本
「あなたの声が聞こえる」(堂郁・手柴)オフ/100P/700円
収録作品・バツゲーム/・あなたの腕で眠らせて。/・サムシングブルー
+ 無料配布本(「あなたの声が聴こえる」)
※修正箇所はありますが、書き下ろしはありません。
※サンプルはTEXTに置いてありますのでご覧下さい。
※この本用に無料配布が付きますが、既刊をお持ちの方は無料配布のみの配布もOKです(むしろ推奨な方向で!)。お声掛けください。
*新刊
「いつか夢で逢えたら」(堂郁)コピー本/36P/300円
【内容】堂上・郁&柴崎の前に、迷子の子供達が現れ…。
◆サンプルは下の折り畳みに~。
*新刊
「冬の無料配布本」その名の通り無料配布本です。
【内容】
「永くて近い距離(玄折)」+「デリケートに好きして(堂郁)」
*11月のシティで配布したペーパーが余っているので、机に置いておきます。(ご自由にどうぞ!)
「微熱アルバム」(堂郁)
私にしては珍しい、本当に堂郁オンリーです!(苦笑)
*お友達の委託グッズ…?あり。
(某所でお会いした方向けのお知らせかもしれません・笑)
これが何かをご存じの方は、売り子さんに声を掛けてあげてくださいませ(笑)
☆冬コミ三日目
委託先:西1ホール り40b「アワグラス」様
*新刊
「スローステップ(手塚慧×柴崎弟)」…が、間に合えば(汗)かなり無理かも…。希望は明日…いやでも無理…かなあ………。
他の図書館本は、二日目の在庫次第で…。
※本人は別の場所で元気にお手伝いの為、本だけ委託。
本人、いつものごとく屍になっているかと思いますが、気にしないでやってください…。にゃにゃにゃ…。
コピー本が出たのは、全てお友達のお陰です!!!
本当にありがとうございました!!!(号泣)
…そして既にダメ出しをされて、凹まされております…がっくり。
なんだかこのまま闇に葬ってしまいたい感じです……どきどきどき。
…私は全身が怠くて泣きそうになっておりますが、明日は無事に行けるか大変心配です…。どきどき。手が震えてるよ!(汗)
☆冬コミ二日目
スペースNO【ク-23a】
サークル名【スイートフラワー】
*再録本
「あなたの声が聞こえる」(堂郁・手柴)オフ/100P/700円
収録作品・バツゲーム/・あなたの腕で眠らせて。/・サムシングブルー
+ 無料配布本(「あなたの声が聴こえる」)
※修正箇所はありますが、書き下ろしはありません。
※サンプルはTEXTに置いてありますのでご覧下さい。
※この本用に無料配布が付きますが、既刊をお持ちの方は無料配布のみの配布もOKです(むしろ推奨な方向で!)。お声掛けください。
*新刊
「いつか夢で逢えたら」(堂郁)コピー本/36P/300円
【内容】堂上・郁&柴崎の前に、迷子の子供達が現れ…。
◆サンプルは下の折り畳みに~。
*新刊
「冬の無料配布本」その名の通り無料配布本です。
【内容】
「永くて近い距離(玄折)」+「デリケートに好きして(堂郁)」
*11月のシティで配布したペーパーが余っているので、机に置いておきます。(ご自由にどうぞ!)
「微熱アルバム」(堂郁)
私にしては珍しい、本当に堂郁オンリーです!(苦笑)
*お友達の委託グッズ…?あり。
(某所でお会いした方向けのお知らせかもしれません・笑)
これが何かをご存じの方は、売り子さんに声を掛けてあげてくださいませ(笑)
☆冬コミ三日目
委託先:西1ホール り40b「アワグラス」様
*新刊
「スローステップ(手塚慧×柴崎弟)」…が、間に合えば(汗)かなり無理かも…。希望は明日…いやでも無理…かなあ………。
他の図書館本は、二日目の在庫次第で…。
※本人は別の場所で元気にお手伝いの為、本だけ委託。
本人、いつものごとく屍になっているかと思いますが、気にしないでやってください…。にゃにゃにゃ…。
コピー本が出たのは、全てお友達のお陰です!!!
本当にありがとうございました!!!(号泣)
…そして既にダメ出しをされて、凹まされております…がっくり。
なんだかこのまま闇に葬ってしまいたい感じです……どきどきどき。
■■■【いつか夢で逢えたら】より抜粋
カツンと、靴に何かが当たった衝撃を感じて堂上は歩みを止めた。
視線を足元に向けると、透明なガラス玉がひとつ。堂上の足に進行を阻まれてその場で小さく揺れ動いていた。
「…ビー玉?」
なんでこんな所にこんなものが。
不思議に思いながらも靴に当たって動きを止めたビー玉を拾い上げる。よほど使い込んだものなのか、あちこち擦れて傷ついていたが、中央に入った一筋のひびが白い模様の様に美しい物だった。
手でも切ったら大変だな。
しばらく手の中でそれを遊ばせた後、突然現れたそれを怪訝に思いながら堂上は辺りを見回した。
「ん?」
「あっ」
振り返った堂上とばちっと目が合った少年が、慌てた声を上げた。
いつからその場にいたのか。視線が合ったままの少年は瞬きも忘れ、開けっ放しの口と同じくらい目も大きく見開いて硬直していた。
小学生か?
少年の存在に気がつかなかった堂上も同じくらい驚いたが、密室でもあるまいし、ましてここは公道である。人通りがあってもおかしくはないとすぐに我に返った。少年に気がつかなかった自分自身には、多少の叱咤をこめる事は忘れずに。
休みだから油断したなどとは、間違っても部下の前では口にしないし、今だってそんな言葉に甘えるつもりはない。
特に今は、ぎゃんぎゃん煩い奴がいるからな。
ふっと頭を過ぎった膨れっ面に、堂上はおもわず苦笑した。最近、決して折り合いが良いとはいえない部下である笠原郁の事を、何かにつけて思い浮かべてしまうのが癖になっている。
出会いが出会いなだけに気になるのかもしれない。
彼女は未だに気がついていない様だが、実は彼女が高校生の時に一度会っていた。
『店長さん、警察呼んで。あたし、この本万引きしたから警察に行くわ!』
大事に本を懐に抱えこみ、良化隊を前にしても揺るがない彼女の凛とした姿にひとめで惹かれた。万引きの汚名を被ってでも本を守ろうとした少女に対し、自分は一体なんなのだと正面から殴られた気分だった。自分の正義はどこにあるのだ、と。
『こちらは関東図書隊だ!』
気がついた時には彼女の前に出ていた。結果的には良化隊から彼女を助けた事になったが、多くを教えられたのは堂上の方だった。今まで自分が目指してきたものが何だったのか、本当は何を守りたかったのか。そして、今の自分に足りないものは何であるのか。原点に返るきっかけをくれたのだ。
『この本は、君が守った本だ』
『ありがとう』
涙と共に贈られた言葉は、そっくりそのまま堂上の心だった。
ありがとう、おかげで大事なものを思い出した。
堂上はたった一度会っただけの郁の事をいつまでも忘れる事が出来ずにいた。だから面接で彼女を見た時、すぐにあの時の少女であると気がついた。そしてすぐにその場から逃げ出したくなった。郁は、捨てたはずの堂上の昔を思い出させる。だが、数分後には別の意味で逃げ出したくなるなんて、一体誰が想像できただろうか。
あれは地獄だったな。
当時、郁を助けた事に一欠片の後悔もない。ただひとつの誤算があるとするならば、郁の記憶力の悪さであろうか。まさか彼女に再会出来るとは夢にも思っていなかったが、自分を追いかけてきた筈の郁が、自分の顔を覚えていなかったとは想像さえしなかった。
まあそれも笠原らしいか。
彼女が憧れているその『王子様』が堂上であるとは全く気がつかずに図書隊に飛び込んできて、女性初の特殊部隊にまで任命された。それからもどんな苦難も乗り越えて、傷つきながらも成長してきた。ただひたすら気持ちよい程に真っ直ぐに。そしていつぞやの宣言通り、自慢の脚で堂上をひらりと追い越してゆくのだろう。
それでいいのだと思う半面、どこか寂しさが拭えないのは己の心の弱さなのか。
「あの…それ」
「ああ、すまない。これはおまえのか?」
ぼんやりと回想に耽っている場合ではなかった。多少の苦さを感じながらも、目の前の少年には罪はない。
手の中で遊ばせていたビー玉を少年に差し出すと、立ちつくしていた少年はこくんと頷いた。
「うん、拾ってくれてありがとう」
身体よりもひとまわり大きなダッフルコートに身を包んだ少年は、首に巻いた真っ白なマフラーをひらりと翻らせて、だっと堂上に向かって駆け寄ってきた。
「おい、突然走るとあぶな…」
「う、わぁっ!」
まさに堂上の注意を遮るように、足を挫かせて小さな身体が宙に浮いた。そのまま姿勢を戻すことが出来ず、両手をばたつかせたがあまり効果はなく。少年の勢いは止まらぬまま、顔から堂上に向かってバランスを崩して倒れ込んだ。
「おっと」
飛び込んできた少年の身体を難なく受け止めた。小学生の体当たりでぐらつく程、柔な鍛え方はしていない。片手で受け止め、ゆっくりと少年を地面に降ろす。
「大丈夫か」
余程驚いたのか、少年は言葉もなく小さな手で必死に堂上にしがみついていた。その手が小刻みに震えているのが目に入り、堂上はぎゅっと小さな身体を抱きしめた。
「もう大丈夫だ」
努めて優しい声を出すとほっとしたのか、やっと掴んでいた手から力が抜けた。榛色の頭がゆっくりと上下に動く。どうやら深呼吸を繰り返しているらしい。
「ご、ごめんなさい」
がっちり堂上にしがみついていた自分に気がついたのか、慌ててぱっと手を離して頭を下げた。
この歳の子供にしては、よく躾けられている。
「男は元気なのが一番だが、気をつけないと怪我をするぞ」
「はい…ごめんなさい」
その言葉にしゅんと俯いてしまった少年を見ていると、なぜか妙な親近感がわいてくる。同じ様な光景をどこかで見たような。しかし、目の前の少年とは間違いなく初対面である。もどかしい程に細い記憶の糸を辿るが、なかなか当たりを引き当てることができなかった。
「ひとりか? こんなところで遊んでいると危ないぞ」
今いる通りはあまり車が通らない路地だが、少し歩けば大道路に続いている。転がったビー玉を追って、うっかり飛び出してしまわないとも限らない。
「ちゃんと気をつける。拾ってくれてありがとう」
堂上からビー玉を受け取った少年は、それをポケットから取り出した白いハンカチに包む。大事そうに包んだそれを、再びポケットに仕舞い込んだ。
「大事なものなのか?」
その仕草に驚いた堂上は、無粋にもつい声を掛けてしまった。
少年が驚いたように堂上を見上げる。どうしようかと悩むような仕草を見せた後、ポケットに仕舞い込んだビー玉を再び取り出して堂上に見せるようにハンカチを広げてくれた。
「僕の宝物なんだ。でも本当はパパの宝物だったのをおねだりして貰ったの。ひびがちょうど真ん中に入っててね、なんだか綺麗でしょう?」
誇らしげに笑顔を浮かべた様子から、少年がどれだけ父親を好きかが伝わってくる。
「そうか、よかったな。でもそれは傷がついているから、素手で触る時は気をつけるように」
「うん! ありがとう」
くしゃりと頭を撫でると、少年は擽ったそうに首を竦めた。
どきん。少年の笑顔に心の何かが引っ掛かった。
元気が良くて、呆れる程に真っ直ぐな瞳。そしてすぐにひとつの顔が浮かんできて、すぐにかき消した。ここまで来るともう苦笑するしかない。
『いい加減、認めちゃったら?』
笑いを堪えた声が脳裏に浮かんで、堂上は顔を顰める。
小牧がこの場にいたら、さっくりと正論で刺されていた所だ。いや。彼の場合、上戸が先に爆発してそれどころではないかもしれない。どちらに転んでも、堂上にはちっとも面白くない。
「…さん。ねえ、どうしたの?」
どうやら、知らぬ間にじっと少年を見つめてしまっていたらしい。正確には、少年を通り越して別の人物の面影を、だが。
少年は向けられた視線に戸惑ったように首を傾げていた。我に返った堂上とばっちり視線が絡み合ってしまい、まんまるな目が動揺したように揺れている。
「僕、どこか変な顔してる?」
「いや、すまない…」
バツが悪く、堂上は宙に視線を遊ばせた。
カツンと、靴に何かが当たった衝撃を感じて堂上は歩みを止めた。
視線を足元に向けると、透明なガラス玉がひとつ。堂上の足に進行を阻まれてその場で小さく揺れ動いていた。
「…ビー玉?」
なんでこんな所にこんなものが。
不思議に思いながらも靴に当たって動きを止めたビー玉を拾い上げる。よほど使い込んだものなのか、あちこち擦れて傷ついていたが、中央に入った一筋のひびが白い模様の様に美しい物だった。
手でも切ったら大変だな。
しばらく手の中でそれを遊ばせた後、突然現れたそれを怪訝に思いながら堂上は辺りを見回した。
「ん?」
「あっ」
振り返った堂上とばちっと目が合った少年が、慌てた声を上げた。
いつからその場にいたのか。視線が合ったままの少年は瞬きも忘れ、開けっ放しの口と同じくらい目も大きく見開いて硬直していた。
小学生か?
少年の存在に気がつかなかった堂上も同じくらい驚いたが、密室でもあるまいし、ましてここは公道である。人通りがあってもおかしくはないとすぐに我に返った。少年に気がつかなかった自分自身には、多少の叱咤をこめる事は忘れずに。
休みだから油断したなどとは、間違っても部下の前では口にしないし、今だってそんな言葉に甘えるつもりはない。
特に今は、ぎゃんぎゃん煩い奴がいるからな。
ふっと頭を過ぎった膨れっ面に、堂上はおもわず苦笑した。最近、決して折り合いが良いとはいえない部下である笠原郁の事を、何かにつけて思い浮かべてしまうのが癖になっている。
出会いが出会いなだけに気になるのかもしれない。
彼女は未だに気がついていない様だが、実は彼女が高校生の時に一度会っていた。
『店長さん、警察呼んで。あたし、この本万引きしたから警察に行くわ!』
大事に本を懐に抱えこみ、良化隊を前にしても揺るがない彼女の凛とした姿にひとめで惹かれた。万引きの汚名を被ってでも本を守ろうとした少女に対し、自分は一体なんなのだと正面から殴られた気分だった。自分の正義はどこにあるのだ、と。
『こちらは関東図書隊だ!』
気がついた時には彼女の前に出ていた。結果的には良化隊から彼女を助けた事になったが、多くを教えられたのは堂上の方だった。今まで自分が目指してきたものが何だったのか、本当は何を守りたかったのか。そして、今の自分に足りないものは何であるのか。原点に返るきっかけをくれたのだ。
『この本は、君が守った本だ』
『ありがとう』
涙と共に贈られた言葉は、そっくりそのまま堂上の心だった。
ありがとう、おかげで大事なものを思い出した。
堂上はたった一度会っただけの郁の事をいつまでも忘れる事が出来ずにいた。だから面接で彼女を見た時、すぐにあの時の少女であると気がついた。そしてすぐにその場から逃げ出したくなった。郁は、捨てたはずの堂上の昔を思い出させる。だが、数分後には別の意味で逃げ出したくなるなんて、一体誰が想像できただろうか。
あれは地獄だったな。
当時、郁を助けた事に一欠片の後悔もない。ただひとつの誤算があるとするならば、郁の記憶力の悪さであろうか。まさか彼女に再会出来るとは夢にも思っていなかったが、自分を追いかけてきた筈の郁が、自分の顔を覚えていなかったとは想像さえしなかった。
まあそれも笠原らしいか。
彼女が憧れているその『王子様』が堂上であるとは全く気がつかずに図書隊に飛び込んできて、女性初の特殊部隊にまで任命された。それからもどんな苦難も乗り越えて、傷つきながらも成長してきた。ただひたすら気持ちよい程に真っ直ぐに。そしていつぞやの宣言通り、自慢の脚で堂上をひらりと追い越してゆくのだろう。
それでいいのだと思う半面、どこか寂しさが拭えないのは己の心の弱さなのか。
「あの…それ」
「ああ、すまない。これはおまえのか?」
ぼんやりと回想に耽っている場合ではなかった。多少の苦さを感じながらも、目の前の少年には罪はない。
手の中で遊ばせていたビー玉を少年に差し出すと、立ちつくしていた少年はこくんと頷いた。
「うん、拾ってくれてありがとう」
身体よりもひとまわり大きなダッフルコートに身を包んだ少年は、首に巻いた真っ白なマフラーをひらりと翻らせて、だっと堂上に向かって駆け寄ってきた。
「おい、突然走るとあぶな…」
「う、わぁっ!」
まさに堂上の注意を遮るように、足を挫かせて小さな身体が宙に浮いた。そのまま姿勢を戻すことが出来ず、両手をばたつかせたがあまり効果はなく。少年の勢いは止まらぬまま、顔から堂上に向かってバランスを崩して倒れ込んだ。
「おっと」
飛び込んできた少年の身体を難なく受け止めた。小学生の体当たりでぐらつく程、柔な鍛え方はしていない。片手で受け止め、ゆっくりと少年を地面に降ろす。
「大丈夫か」
余程驚いたのか、少年は言葉もなく小さな手で必死に堂上にしがみついていた。その手が小刻みに震えているのが目に入り、堂上はぎゅっと小さな身体を抱きしめた。
「もう大丈夫だ」
努めて優しい声を出すとほっとしたのか、やっと掴んでいた手から力が抜けた。榛色の頭がゆっくりと上下に動く。どうやら深呼吸を繰り返しているらしい。
「ご、ごめんなさい」
がっちり堂上にしがみついていた自分に気がついたのか、慌ててぱっと手を離して頭を下げた。
この歳の子供にしては、よく躾けられている。
「男は元気なのが一番だが、気をつけないと怪我をするぞ」
「はい…ごめんなさい」
その言葉にしゅんと俯いてしまった少年を見ていると、なぜか妙な親近感がわいてくる。同じ様な光景をどこかで見たような。しかし、目の前の少年とは間違いなく初対面である。もどかしい程に細い記憶の糸を辿るが、なかなか当たりを引き当てることができなかった。
「ひとりか? こんなところで遊んでいると危ないぞ」
今いる通りはあまり車が通らない路地だが、少し歩けば大道路に続いている。転がったビー玉を追って、うっかり飛び出してしまわないとも限らない。
「ちゃんと気をつける。拾ってくれてありがとう」
堂上からビー玉を受け取った少年は、それをポケットから取り出した白いハンカチに包む。大事そうに包んだそれを、再びポケットに仕舞い込んだ。
「大事なものなのか?」
その仕草に驚いた堂上は、無粋にもつい声を掛けてしまった。
少年が驚いたように堂上を見上げる。どうしようかと悩むような仕草を見せた後、ポケットに仕舞い込んだビー玉を再び取り出して堂上に見せるようにハンカチを広げてくれた。
「僕の宝物なんだ。でも本当はパパの宝物だったのをおねだりして貰ったの。ひびがちょうど真ん中に入っててね、なんだか綺麗でしょう?」
誇らしげに笑顔を浮かべた様子から、少年がどれだけ父親を好きかが伝わってくる。
「そうか、よかったな。でもそれは傷がついているから、素手で触る時は気をつけるように」
「うん! ありがとう」
くしゃりと頭を撫でると、少年は擽ったそうに首を竦めた。
どきん。少年の笑顔に心の何かが引っ掛かった。
元気が良くて、呆れる程に真っ直ぐな瞳。そしてすぐにひとつの顔が浮かんできて、すぐにかき消した。ここまで来るともう苦笑するしかない。
『いい加減、認めちゃったら?』
笑いを堪えた声が脳裏に浮かんで、堂上は顔を顰める。
小牧がこの場にいたら、さっくりと正論で刺されていた所だ。いや。彼の場合、上戸が先に爆発してそれどころではないかもしれない。どちらに転んでも、堂上にはちっとも面白くない。
「…さん。ねえ、どうしたの?」
どうやら、知らぬ間にじっと少年を見つめてしまっていたらしい。正確には、少年を通り越して別の人物の面影を、だが。
少年は向けられた視線に戸惑ったように首を傾げていた。我に返った堂上とばっちり視線が絡み合ってしまい、まんまるな目が動揺したように揺れている。
「僕、どこか変な顔してる?」
「いや、すまない…」
バツが悪く、堂上は宙に視線を遊ばせた。
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